住宅ローン金利の変動・固定・固定期間選択型の賢い選び方?
マイホーム購入の時に、たくさんの人が利用する住宅ローン。住宅ローンと一言でいっても、いろいろな違いがあります。その中でも、必ず選択をせまられるのが、金利タイプ(変動金利型・固定金利型・固定金利期間選択型)。
いったいどれを選択したら良いのか?どれがお得なのか?いろいろ調べると、いろいろな意見があるけど・・・。ここでは、いくつかの視点から、どの金利タイプを選べば良いのか?考えてみます。まずは、金利タイプの特徴を簡単にまとめてみます。
変動金利型・固定金利型・固定金利期間選択型の特徴
・変動金利型
変動金利は読んで字のごとく、住宅ローンを借りたときの金利が、将来にわたり上がったり下がったりと変動します。それゆえ、借入時に予定する、総返済額(元金+利息)も変動します。
一般には、金利の見直しが年2回行われ、その都度、元金(がんきん・借り入れしたお金)と利息についてどのように返済をするのか見直しがされます。ただし、当初取り決めされた、月々の返済額は5年間変更されません。5年間の金利の変化により、当初予定していた元金が返済されない場合は、6年目以降、それまでの月々返済額の1.25倍の範囲内で返済額が増えることになります。その後も5年ごとに、同様に月々返済額は見直しされます。
また、借入期間中に金利が急激に上昇すると、返済額の中で利息を払うことができなくなり、未払利息が発生する場合もあります。その場合は、毎月の返済すべてが支払利息で元金が返済されていない状態になります。
※上記グラフ中の赤線枠は、金利が上昇した場合に、当初予定していた元金が返済されなかった部分です。
・固定金利型
固定金利型は、当初借入時に決められた金利に基づき、全ての返済期間における、元金と支払利息についてどのように返済するかが決定され、月々の返済額が変わることはありません。つまり、総返済額(元金+利息)が借入時に確定します。
・固定金利期間選択型
固定金利期間選択型は、返済期間のうち当初から2年、3年、5年、10年などのように、ある一定期間固定金利で返済をし、その期間が終了した時点で、その後は、その時点での変動金利型が適用されるものや、変動金利型または固定金利型を選択するものなどがあります。
固定金利期間選択型は、一定期間終了時に再度固定金利を選択し、全ての返済期間を固定金利とした場合でも、その時点での金利が適用となるため、変動金利型同様、借入時に予定する総返済額(元金+利息)は変動します。
月々返済額についても、期間終了時点の金利で決定するため、変動金利型のように当初返済額の1.25倍の範囲内といった決まりもありません。
さて、金利の特徴については、なんとなくご理解いただけたと思いますが、それでは、実際過去に、変動金利型、固定金利期間選択型の金利はどのように推移したのでしょうか?民間金融機関の住宅ローン金利の推移について、独立行政法人住宅支援機構により、主要都市銀行のHP等からの集計した金利(中央値)が掲載されています。
民間金融機関の住宅ローン金利の推移
上記グラフに昭和59年から平成28年まで32年におよぶ変化が記載されています。この中で、昭和62年から平成2年までの約4年間に、金利4.9%から8.5%まで3.6%急激に上昇しているのがわかります。その後は、平成2年の8.5%を最高に平成8年までに2%台まで急激に下降し、以来20年近く金利は横ばいを続けています。これらは過去の推移で将来もこのような推移になるというわけではありませんが、参考に、金利が3.6%急激に上昇した場合、変動金利型での借り入れをしていた場合、どのようになるのか下記に例をあげて試算してみます。
例)
■借入額3,500万円 ■返済年数35年 ■元利均等返済 ボーナス返済無
■金利0.6%の場合
月額返済額 92,410円(元金返済74,910円 支払利息17,500円)
■金利4.2%の場合
月額返済額 92,410円(元金返済0円 支払利息-30,090円)
変動金利型の場合、当初の返済額が5年間変わらないので、5年の間に3.6%急激に上昇すると上記のように、毎月30,090円の未払利息が発生します。つまり、毎月返済していても、元金が返済されていないばかりか、支払利息の一部も払えていない状態になります。
5年後当初支払額の92,410円の1.25倍の115,512円に増えたとしても、金利が上昇したままだと、いぜん元金返済はされず、未払利息が発生し続けることになります。
過去30数年の間には、このような急激に金利が上昇した時期がありましたが、その後上昇した金利以上に急激に下降もしています。
総返済額・月々返済額・借入金額からみた金利タイプごとの特徴
・総返済額(元金+利息)
固定金利型は、借入時点で総返済額が決定します。変動金利型や固定金利期間選択型は、総返済額が借入期間中に変化します。
変動金利型や固定金利期間選択型の場合、固定金利型とくらべ、借入期間中の平均金利が借入時点の固定金利より低ければ、総返済額は固定金利型より少なく済みます。逆に平均金利が高くなれば総返済額は多くなります。
確定している固定金利型の総返済額と比べ、変動金利型や固定金利期間選択型の総返済額が多くなるか?少なくなるか?将来の金利を正確に予想できる人はいないので、誰にも分らないことです。
・月々の返済額
固定金利型は、借入時点で借入期間中の月々返済額は、総返済額同様確定します。
変動金利は、当初5年間の月々返済額は確定し、その後金利が変化した際も、5年ごとに、それまでの返済額の1.25倍の範囲で変化することが決まっています。つまり最大の月々返済額は決まっています。
固定金利期間選択型は、固定期間中の返済額は確定しますが、その後は、その時点での金利により、変動金利型が適用されるものは変動金利型に、変動金利型または固定金利型を選択するものはいずれか選択により、月々の返済額が決定します。いずれにしても、借入時点で、月々の返済額は確定しません。
例1)固定金利型と変動金利型の借入時点の金利差0.5%とした場合の月々返済額の対比
■借入額3,500万円 ■返済年数35年 ■元利均等返済 ボーナス返済無
【変動金利型】金利0.6%の場合 月々返済額 92,410円 → 1.25倍の月々返済額 115,512円
【固定金利型】金利 1.1%の場合 月々返済額 100,439円
上記の例1)で、当初借入額、返済期間を同じにした場合、当初5年間は変動金利型は、固定金利型にくらべ、月々8,029円少なくなります。借り入れ後、金利が上昇すれば、最大6年目以降115,512円になるので、固定金利型に比べ、6年目以降月々15,073円支払が多くなります。
10年間の平均で考えると、変動金利型の月々返済額は、固定金利型に比べ最大3,522円高くなることがある、ということがわかります。(借入額100万円、返済期間35年に換算すると、月額約100円高くなることがあります。)
例2)固定金利期間選択型の借入時点の金利0.5%で、期間終了時点の金利が借入時点から3.6%急激に上昇した場合の月々返済額
■借入額3,500万円 ■返済年数35年 ■元利均等返済 ボーナス返済無
【固定金利期間選択型】金利05%の場合 月々返済額 90,855円
【固定期間5年終了時】 金利4.1%の場合 月々返済額 147,134円(ただし固定期間終了時の借入残高3,045万円で試算)
上記の例2)のように、固定金利期間選択型は、変動金利型のように、当初返済額に対して1.25倍の範囲内で返済額が変わる決まりははないため、期間終了時の金利が急上昇している場合は、1.25倍の範囲を超えることもあります。
・借入金額
固定金利型、変動金利型では、月々返済額が同じであれば、借入金額は当然変わります。
例)固定金利型と変動金利型の金利差0.5%の場合
■返済年数35年 ■元利均等返済 ボーナス返済無
【変動金利型】金利0.6%の場合 月々返済額 92,410円 の場合 借入額は、3,500万円
【固定金利型】金利 1.1%の場合 月々返済額 92,410円 の場合 借入額は、3,220万円
上記の例の場合で、借入金額は、固定金利型のほうが、280万円少なくなります。固定金利型と変動金利型の金利差が広がればより借入額も固定金利型が少なくなります。
住宅ローンの金利タイプを選ぶ
住宅ローンの金利タイプを選ぶ際には、上記で説明した、金利タイプごとの特徴や、総返済額・月々返済額・借入金額などを参考に、住宅ローン利用者の勤め先、勤続年数、年齢、収入、貯蓄、他借入、加入保険、家族構成、子供の教育費、通勤通学の場所、趣味、考え方など、状況を鑑み金利タイプを決定します。
ゆえに、ベストな選択も人により違うものになります。
ファイナンシャルプランナーなら多くは、これら個々の情報と金融知識により、金融収支・資産などの推移を検討しながら、最適な金利タイプを提案します。
ファイナンシャルプランナーが考える具体的な事例。
●Aさん:30歳(会社員・年収500万円・60歳定年)
●家族構成:妻30歳(専業主婦)・長男1歳
●2年後に第2子出産を計画中
●35歳にマイホーム購入予定、物件価格2,500万円(うち頭金250万円)
●住宅ローンの返済とお子様の教育資金が捻出できるか不安を抱えている。
【詳細データ】
・現在の預貯金額:300万円 ・貯蓄の運用率:0.02% ・現在の生活費:30万円/月 ・老後の生活費:22.3万円/ 月(全国平均値) ・お子様の進学プラン(二人とも)幼稚園(私立)小学校(公立)中学校(公立)高校(公立)大学(私立・文系) ・退職金見込み額:1,137万円(全国平均値) ・現在の住まい:賃貸住宅 家賃7万円 ・お子様結婚時の援助費用(二人とも):お子様29歳時に183万円ずつ(全国平均値)
上記設定で将来が固定される、固定金利型で長期の推移を作成する。
■借入額2,250万円 ■返済年数30年 ■金利1.1% ■元利均等返済 ボーナス返済無
年間収支と貯蓄残高の推移から、上記の前提条件で住宅を購入すると、50歳代で最大1400万円近くの現金が不足します。
改善策として、
1)現在の生活費を30万円から25万円に削減する。
・家計簿をつけて使途不明金を減らす。
・食費を減らす(ふるさと納税の活用)
・生命保険料などを見直す
2)60歳定年後、5年間再就職する。返済年数を35年とする。
【改善後】
上記のように、定年後も貯蓄残高はもちろん、35年の間マイナスになることもなくなりました。
住宅ローンの金利タイプを選ぶ際には、変動金利型、固定金利型、固定金利期間選択型それぞれに前提条件に基づきシュミレーションし改善策を検討することで、どのタイプを選択すれば良いかの判断をすることができます。
ただし、変動金利の将来の推移を予想できないのと同様に、収入や、家族構成、定年年齢、退職金など、シュミレーションする前提条件は、長期間において将来どのように変化するかわかりません。
住宅ローンの金利タイプを選ぶ もう一つの視点
金融の知識において、住宅ローンの金利タイプを選ぶことは、方法の一つではあります。ただ、金融の知識だけで選ぶ前に、住宅ローンは、車やパソコン、スマートフォンなど一般消費財の購入や投資の為ではなく、暮らしの購入の為に利用するということも考えなければなりません。
住宅は、暮らしや生活費にも大きな影響を与えます。
購入する住宅によって、生活費が違う!
・光熱費(断熱性能、太陽光発電設備、間取り、通風彩光などにより、毎月の光熱費は家により違う)
・交通費(生活施設、駅からの距離など立地により違う)
・税金(固定資産税、都市計画税、所得税控除など家により違う)
・医療費(近年、家の断熱性能と風邪などの罹患率の関係も報告されている)
・家賃収入(収益併用型住宅の収入)
住宅ローンの金利タイプや、月々返済額は、これから購入する住宅での生活費も適切に検討することが必要です。
住宅ローンの金利タイプを選ぶ 最後の視点
住宅ローンの金利タイプを選ぶことは、住宅を購入することで得られる暮らしのための選択です。
選択するときには、総返済額・月々返済額・借入金額に目が行きがちになります。その選択が住宅を購入することで得ようと考えていた暮らしになるのか?よく考える必要があります。住宅ローンのお金にとらわれすぎ、そもそもの暮らしが得られなかったら本末転倒です。
得ようとした暮らしができる住宅が見つかり、住宅ローンを利用する際、借入金額、月々返済額について余裕のある方は、金利タイプは好きなタイプをお選びいただければよいと思います。将来の金利について正解は誰もわからないからです。しかし、そのように余裕のある人ばかりではありません。住宅ローンの金利タイプにより、同じ月々返済額だとしても、借入金額はかわります。
例)固定金利型と変動金利型の金利差0.5%の場合
■返済年数35年 ■元利均等返済 ボーナス返済無
【変動金利型】金利0.6%の場合 月々返済額 92,410円 の場合 借入額は、3,500万円
【固定金利型】金利 1.1%の場合 月々返済額 92,410円 の場合 借入額は、3,220万円
変動金利型のほうが、借入額が280万円多くなります。ただし、変動金利型の場合、将来10年間で考えると、固定金利型に比べ月々最大3,522円高くなる可能性はあります。
仮に280万円高い住宅が購入できると考えると、建物工事費坪単価40万から60万円の仮定で、7坪から4.5坪程、畳数にすると9から14畳も広い家が購入できます。また、断熱性能の高い家や太陽光発電設備がある家、最寄り駅にもっと近い家のように生活費が少なく済む家も検討できます。
住宅ローンの金利タイプを選ぶということは、結局は、得ようとする暮らしから検討することが必要です。
住宅ローンの金利タイプを選ぶ まとめ
住宅ローンの金利タイプ(変動金利型、固定金利型、固定金利期間選択型)を選ぶ
3つのポイント
1.それぞれの前提条件に基づきシュミレーションし改善策を検討する
2.購入する住宅での生活費を適切に検討す
3.得ようとする暮らしから検討する
ファイナンシャルプランナー・住宅ローンアドバイザー / 株式会社エステート白馬
他資格:不動産コンサルティングマスター・相続対策専門士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
ハウスメーカーで家を紹介していたころ、自社の商品という限られたものしかご紹介できないことにもどかしさを感じ、個々の人それぞれにあった、情報や知識をご紹介できる仕事がしたいと、現在に至った。金融、不動産に精通した知識と幅広い情報でご相談に応じます。